舟橋研究室
創造工学部 先端マテリアル科学コース  工学研究科 材料創造工学専攻
Funahashi Group
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イオン性部位を有する液晶性半導体の機能化
 イオン性部位を組み込んだ液晶分子は,イオン性部位と非イオン性部位のナノ相分離により,一次元的なカラムナー相,二次元的なラメラ相,三次元的な双連続キュービック相を示すことが示されている。
 筆者らは,π電子共役系からなる液晶相に高次構造を導入することにより新しい電子機能を発現させようと考えた。そこで、フェニルターチオフェンにイオン性のイミダゾリウム塩部位を導入した液晶分子1 を合成した(図1(a))。液晶化合物1は,45〜150℃の範囲でスメクチックA相を示した(図1(b)。この液晶相では,イオン性部位とπ共役系がナノ相分離し,イオン性部位からなる層とπ共役系が凝集した層が交互に積層した超構造が形成されていた。
 イオン性部位からなる層では,アニオンの運動によるイオン伝導が,π 共役系からなる層では,π 軌道の重なりを介したホール輸送が進行する(図1cb))。
 この液晶材料を2 枚のITO 電極からなるセルに封入し,液晶相において直流電圧を印加したところ,可逆的な色の変化が起こった(図1(d))。図1(e)に示すように,直流電圧の印加により,イオン伝導層において,イオン種が電極に移動し,電気二重層が形成され,電極近傍でπ電子共役系がカチオンラジカルに酸化されることにより色が変化したものと考えられる。
 エレクトロクロミズムを示す液晶材料や共役高分子材料は多く知られているが,通常は,電極上に薄膜を作製し,電解質溶液中で直流電圧を印加する必要がある。本液晶では,イオン伝導層とホール伝導層が単一の液晶相内に組み込まれているため,電解質溶液が不要で,単層型の素子を作製することができる。また,イオン伝導層,および,ホール輸送層内では,分子が配向秩序を有するため,イオンやホールの輸送が効率的に進行するのも重要な特徴である。本液晶を用いて作製したエレクトロクロミック素子はmsオーダーの応答速度を示す(図1(d))。
 
 図1 (a)液晶化合物1の分子構造,(b)液晶相での偏光顕微鏡写真、(c)液晶相での凝集構造,および,直流電圧印加時の正電極での反応,(d)液晶相でのエレクトロクロミズム,および,(e)その応答
 
本研究を進めるにあたり、東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻加藤隆史教授のご指導を受けました。また、博士課程学生(当時。現在JXTG株式会社)矢崎さなみ様にお世話になりました。
この研究成果により、文部科学省科学研究費新学術領域研究「配位プログラム」に採択されました。
この研究成果は現在取り組んでいる、ナノ相分離型液晶性混合伝導体の出発点になったものです。
 
 

参考文献
1) S. Yazaki, M. Funahashi, and T. Kato, “Electrochromic liquid crystals consisting of π-conjugated and ionic moieties”, J. Am. Chem. Soc., 130, 13206-13207 (2008).
2) S. Yazaki, M. Funahashi, J. Kagimoto, H. Ohno, T. Kato, “Nanostructured Liquid Crystals Combining Ionic and Electronic Functions”, J. Am. Chem. Soc. 132, 7702-7708 (2010).
3) 舟橋正浩、加藤隆史「ナノ相分離を利用した液晶性π共役分子組織体の電子機能」高分子、2011年60巻7月号p.463-464

 
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