松田研究室

研究の内容

高性能・高機能の機械構造物開発に伴い,その用途に応じて様々な材料が使用されています。構造物は高い安全性や信頼性が要求されるため,使用する材料は「どのようにして破壊するのか(破壊メカニズム)」,「どのくらいまで使えるのか・耐えられるのか(強度や寿命)」を知る必要があります。画期的な新しい材料が開発されたとしても,理解せず,すぐに使うことは大変危険です。必ず広範な試験等を行って,よく理解してから使うことが大変重要です。本研究室では,構造用材料(主にセラミックスや炭素繊維強化複合材料(CFRP))の破壊メカニズムや強度・寿命を力学的試験および理論的解析より調査して「安全性」をサイエンスしています(材料のお医者さんでもあります)。破壊を専門とする破壊屋(Hakai-ya)さんの研究室です。

お気に入りの名言「創造の前に破壊あり…だ」(ドラゴンボール超 破壊神 ビルス 名言集より)

テレビで放送されました

> 2023年8月2日テレビ新広島「発見!アドレナ人」で本研究室が紹介されました。提供のホーコス株式会社がアップしたYoutubeのページです。左の画像をクリックすれば動画を視聴できます。

研究紹介動画

研究紹介の動画を作成してyoutubeへアップしました。左の画像をクリックすれば動画を視聴できます。

繊維強化プラスチック(FRP)って何?~ハンドレイアップ成形にチャレンジ~

ハンドレイアップ成形の動画を作成してyoutubeへアップしました。左の画像をクリックすれば動画を視聴できます。

<炭素繊維強化型プラスチック(CFRP)およびプラスチックに関する研究>

CFRPのせん断加工法の開発

研究期間:2013年度~

高比強度を有するCFRPは,自動車など大量生産部品として適用が拡大しています。基本的にニアネットシェイプで成形されますが,その後のトリミングや穴あけなどの2次加工は必要であり,タクトタイム短縮が急務です。金属ではすでに短時間で可能な2次加工技術はありますが,CFRPに対してはありません。そのため,金属と同じようにタクトタイムを短縮して加工できる技術開発を目指しています。金属は塑性変形を応用していますが,異方性を有するCFRPは脆性的な破壊挙動を示すため,塑性変形ではなく,CFRP特有の変形・損傷・破壊を考えなければなりません。現在は,最も汎用なパンチプレス加工を対象とし,CFRP特有の変形・損傷・破壊を追及して研究を進めています。


<研究成果>

・日本複合材料学会誌,49(2), pp.48-56(2023)
・J. Compos. Mater., 55(28), pp.4111-4124 (2021.12)
・(株)技術情報協会,pp.450~462(2019.6.28),ISBN:978-4-86104-752-7
・日本複合材料学会誌,42(1), pp.13-22(2016)

<研究助成>

・本研究の一部は公益財団法人 京都技術科学センター 2022年度研究開発助成の助成を受けました。
テーマ:衝撃パンチング穿孔を有するCFRP積層板のインピーダンスモニタリングによる引張損傷挙動の解明
・本研究の一部は天田財団 一般研究開発助成 AF-2021018-B3の助成を受けました。
テーマ:CFRP積層板のパンチプレス細穴加工法の基礎研究
・本研究の一部は天田財団 奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017039の助成を受けました。
テーマ:CFRP積層板のパンチプレス加工に及ぼすマイナスクリアランス効果の解明


・本研究の一部はスズキ財団平成29年度 若手科学技術研究助成を受けました。
テーマ:異方性CFRP積層板の落錘衝撃アシストによるパンチプレス加工法の開発



・本研究の一部は公益財団法人JKA2021年度機械振興補助事業 若手研究の助成を受けました。
テーマ:CFRPのためのインパクトパンチプレス加工法の最適化補助事業

成果公表



CFRPのリサイクル技術に関する研究

研究期間:2018年度~

CFRPは,航空機や自動車など大量生産部品として適用が拡大しています。その後,自動車であれば約10年ほどで使用を終えるため将来的にCFRPは使用済み廃材として大量に排出されることが想定されています。そのため,経済性および環境負荷低減の観点から使用済みCFRPをリサイクルする技術が要求されています。そこで,本研究室の得意な破壊を応用し,電気的および熱的な効果による炭素繊維と樹脂の分離技術開発を進めています。


<受賞>

・公益財団法人エレキテル尾崎財団 第31回源内賞

<研究成果>

・Compos. A.178 2024.3, 107991
・Adv. Compos. Mater. 32(4), 2023,pp.519-531
・Compos. Struct.251(15) 2022.7, 115603
・Sep. Purif. Technol.251(15)2020.11
・Compos. Struct.234(15) 2020.2, 111665
・Sep. Purif. Technol.231(16)2020.1, 115885

<研究助成>

本研究は科学研究費基盤研究(C)(26820015,22K04714)研究助成を受けました。
テーマ:電気インピーダンス法を併用したCFRPのバイポーラ型電気分離メカニズムの解明





本研究の一部は近藤記念財団 令和2年度(第7回)研究助成を受けました。
テーマ:電気ショックを援用した熱分解法によるCFRPリサイクル技術の最適化




・本研究の一部はスズキ財団令和2年度 一般 科学技術研究助成を受けました。
テーマ:ハイブリッド熱分解法によるCFRPリサイクル技術の最適化



<数理モデルに関する研究>

確率過程の応用

研究期間:2019年度~

工学分野における信頼性を確保するためには,対象物の時間とともに移り変わる現象を確率論的に理解する必要があります。そこで,日本材料学会信頼性工学部門委員会において確率過程応用研究分科会を発足し,実在する材料・構造物の損傷・破壊問題を対象にこれを確率過程論に応用することを試みています。

<分科会web>

 

<研究成果>

・材料,Vol.73,No.3 (2024).
・材料(連載講座),Vol.70,No.10 (2021), pp.782-787.




<終了した研究>

微小セラミックス試験片のためのスモールパンチ試験評価

研究期間:2018年度~

低炭素・低エネルギ社会の構築が課題となる中,PZTやNiO/YSZのような機能性セラミックスは,MEMSデバイスや固体酸化物型燃料電池(SOFC)のような小型デバイス用材料として適用されています。SOFCは,高い発電効率と高品位な排熱利用で市場への導入が始まりつつあります。通常24時間運転されるため耐久性が重要であり,SOFCセルを構成するセラミックスは脆性を有するため,その耐久性を評価することが重要です。そこで,小型デバイスサイズのセラミックス強度/剛性をスモールパンチ(SP)試験によって正確にかつ簡易的に評価する手法を開発することを目指しています。

<活動>

・SOFCセル用セラミックス材料の特性試験法に関する国際標準化WG1,2委員

<研究成果>

・材料,Vol.71,No.3 pp.266-272,2022.

各種負荷様式に対する強度/寿命特性・信頼性に関する研究

研究期間:2007年度~2019年度(終了)

セラミックスの基本的な強度/寿命信頼性に関する研究です。オイルショックを契機に1970年代から国内外において積極的にセラミックスを構造部材として適用されてきました。その後,1980年代後半~1990年代前半にかけて強度/寿命信頼性に関する研究が行われてきましたが,1990年代後半からバブル崩壊により材料そのものの信頼性を底上げするプロセス研究が盛んになり,今に至っています。セラミックスを「作る」人はたくさんいますが,いまだ明らかになっていない点があるにも関わらず,セラミックスの「使い方」を研究する人はは国内ではほとんどいません。そこで既往のデータに基づいて,高温,静的負荷,熱衝撃,接触,変動荷重下など様々な環境・負荷様式での強度および寿命特性を明らかにし,それを予測する力学的モデルの構築と検証を行っています。

<研究成果>

・Int. J. Fract., 215(1-2), pp.175-182 (2019)
・機論,83(847), DOI:10.1299/transjsme.16-00369 (2017)
・材料,62(9),pp.569-574 (2013)
・機論A編,78(790), pp.912-922 (2012)
・J. Mater. Sci.,46(15), pp.5056-5063 (2011)

高温環境下での実機使用に対するセラミック軸受の強度信頼性評価

研究期間:2013年度~2019年度(終了)

高比強度,耐摩耗性,耐熱性に優れたセラミック軸受球は航空・宇宙分野でのハイエンド部品に適用が進んでおり,実機を想定した苛酷な環境下での繰り返し使用を想定した強度信頼性評価は必要です。しかしながらセラミックスは脆いために一定以上の急激な温度差に曝されると破壊します。そこで,実機を想定して熱衝撃を受けたセラミック軸受球に対する巨視的および微視的損傷に対するメカニズムを解明し,強度信頼性を評価しています。


<研究成果>

・Eng. Fract. Mech., Volume 255, 1 October 2021, 107924
・Eng. Fract. Mech., 197(15), pp.236-247(2018)
・J. Mater. Sci., 51(11), pp.5502-5513(2016)
・Proceedings of APCFS, pp.83-84(2016)

<研究助成>

本研究は科学研究費若手研究B(26820015,17K14563)研究助成を受けました。




脆性破壊に対するシャルピー吸収エネルギーの力学的意義

研究期間:2015年度~2018年度(終了)

材料のじん性は,一般に破壊じん性値で評価されます。簡易的な手法であるシャルピー衝撃試験は,品質保証のための相対的評価の指標として役割を果たしています。例えばJISG3106において脆性破壊の危険性を保証するために各グレードに応じて吸収エネルギーが規定されています。例えば0℃27J以上と規定されていま。.27Jってどのような破壊メカニズムでの吸収エネルギーなのでしょうか。もし寸法が変わった場合,同じ値を用いてよいのでしょうか。脆性破壊に対して吸収エネルギーを力学的にアプローチしています。

<研究成果>

・日本金属学会誌,82(4),pp.102-107(2018)

セラミックスの損傷許容性評価

研究期間:2007年度~2009年度(終了)

優れた損傷許容性を有するセラミックスの各種負荷様式での強度特性および破壊メカニズムを解明し,これを基に材料によらない損傷許容性の概念を提唱することを目的としています。本テーマで博士号を取得しました。思い出深いテーマであり,様々な分野の先生方と積極的に交流し,多くのご助言をいただきました。いろいろなアプローチ方法を学び,応用してきました。苦しい日々でしたが,恵まれた環境で博士号を取得でき,感謝の思いでいっぱいです。まだまだ解決しきれていない課題があります。

<研究成果>

・Eng. Fract. Mech.,77(13),pp.2601-2609(2010)
・材料,59(5),pp.342-347(2010)

高分子材料(非晶性ポリマー)の疲労特性のモデリング

研究期間:2012年度~2013年度(終了)

プラスチックは,身近なものから工業的まで幅広く使用されています。特に長い間使用し続けて問題となることが疲労です。ニュースなどでよく「金属疲労」という言葉を耳にしますが,材料は負荷を受け続けるとヒトが疲れるように疲れてしまい,その後は破壊してしまいます。この現象を疲労といいます。プラスチックも同様に疲労します。プラスチックを安全に使うためには,疲労特性を把握する必要があります。非晶性ポリマーのポリカーボネートに対してき裂進展を予測するモデルの構築と実験的検証を行いました。

<研究成果>

・Polymer Eng. Sci., 53,pp.1920-1926(2013)

超塑性現象を応用した処理法

研究期間:2009年度~2013年度(終了)

超塑性とは,材料を高温域で一定のひずみ速度で変形させた時,数百%以上に伸びる現象です。一方,材料を密着させて融点以下の温度条件では,原子が拡散します。原子と原子はある一定距離近づけるとくっつきます。これらの現象を利用して超塑性アルミニウム合金および超塑性2相ステンレス鋼の応用として固相接合や表面処理について研究しています。

<研究成果>

・Mater. Chem. Phys.,Vol.114,pp.522-524(2009)
・Mater. Chem. Phys.,Vol.114,pp.599-603(2009)

手巻きウインチを題材とした実践的な設計製作教育

研究期間:2012年度~2016年度(沼津高専機械工学科3年生の授業にて現在も実施中)

高専の特徴を活かした手巻きウインチを題材とした設計製作教育教材を開発しました。習得した知識や技術を用いて設計から製作まで1年間通して実施します。実践的なものづくりや生産設計体験,その中で経験する数多くの失敗もまた勉強になっています。

<研究成果>

・工学教育,65(6),pp.98-102(2017)
・工学教育,65(6),pp.80-85(2017)
・工学教育,63(6),pp.93-98(2015)
・工学教育,62(5),pp.33-38 (2014)
→月間アクセス数ランキング2017年10月(J-STAGE)第4位

<謝辞>

教材開発には,H25年度沼津高専機械工学科卒業の中司君(卒研指導教員 松田)に多大なるご協力をいただきました。後輩たちは中司君が作ってくれたものを基礎として勉強しています。

パソコンの液晶ディスレイを光源に用いた光弾性法

研究期間:2012年度~2014年度(終了)

パソコンの液晶ディスプレイ(LCD)の画面は,RGB3原色によって表示されます。また,LCD内には偏光板が入っているため使っていてもまぶしくありません。これを利用して3種類のR・G・B光による光弾性実験を行いました。工学教育上,光の特性との関連性を含めて基本的な光弾性と材料力学の関係を学ぶことができます。

<研究成果>

・機論,81(822),p.14-00456(2015)