香川大学 工学部 材料創造工学科

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 多くの金属の強化機構の中でも結晶粒微細化は靱性を損なわずに素材を強化させる事が可能で非常に魅力的な手法です。チタン合金においてもこれまで様々なプロセスを施し、微細化にチャレンジされてきました。チタン合金は鉄鋼材料に比べ、積層欠陥エネルギーが高く、そのため高温での加工過程で微細化プロセスは連続型の動的再結晶もしくは動的回復が支配的となり、均質な微細粒組織を形成するには多量のひずみ量を必要とする問題がありました。

 
 最近、当研究グループでは、α'マルテンサイト組織を出発組織として、適切な条件で温間・熱間加工を施すことで均質な超微細粒組織を形成する事を見出しました(右図参照)。これは微細組織形態、多量の内部欠陥、準安定状態、多量の{10-11}内部双晶の形成などのマルテンサイトの特徴から従来は活発に発現しない不連続型の動的再結晶が活発に起こるためであることを明らかに致しました(下図参照)。

 
 この超微細粒組織形成に伴い、素材は高延性(靱性)を維持して著しく高強度化されることが示され、加工プロセスも既存のプロセスが利用可能で、自動車用・航空機用を中心とした応用展開が可能となり、現在は国内のメーカー、海外(フランス)の研究機関(アルビ鉱山大学)と密接に連携して研究を遂行している所です。

 上記で示したプロセスで、圧延条件を最適化させて超微細粒組織を有するTi-6Al-4V合金(α'-UFG材と呼ぶ)を製造しました。本素材の平均結晶粒径は0.4μmであり、等軸状で転位密度が高く、またα単相組織を有するのが特徴であります。このα'-UFG材を600℃以上で変形させますと、右図の通り、超塑性が発現する事が明らかとなりました。従来に比べても低温・高速域で超塑性が発現しており、加工過程の酸化の影響が抑制され、また生産性が向上する点で航空機用だけでなく広範な用途へのネットシェイプ加工の展開が可能となります。
 
これはα'-UFG材が微細粒組織を呈している事に加え、α単相であった事から、変形過程でβ析出が起き、粒界部での応力集中の緩和機構として強く作用した事が要因として考えられます。更に変形過程において動的にβ相が生成し、粒界すべりも更に促進されるために良好な超塑性特性が発現したと考えられます(下図参照)。

 低温・高速超塑性変形後も均質な微細組織は維持され、加工後においても高強度が維持できることから、ネットシェイプ加工も実現可能な高機能化プロセスとして今後、期待されます。

・超微細粒組織形成

・低温・高速超塑性の発現

Works

松本研究室 (Matsumoto lab.)

Profile

Department of Advanced Materials Science, Faculty of Engineering, Kagawa University

Member

1-2. α'マルテンサイトを利用した温間・熱間加工によるTi-6Al-4V
合金の結晶粒微細化と低温・高速超塑性の実現