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主な研究の内容

画像再構成

医療施設でX線CT(Computed Tomography)検査を受けると身体を輪切りにしたときの断層画像(下中央図)が得られます。その断層画像をCT画像とよびます。CT画像は,体の周りを回転するX線センサで撮影されたデータ(左下図)に対して,ある数学的理論に基づいた計算を行うことによって作成されています。これを画像再構成といいます。画像再構成問題は,逆問題とよばれる数学的な問題として定式化することができます。当研究室では,数理モデル(微分方程式や差分方程式)や機械学習システムを使って,高速に,かつ,高画質の画像を再構成するための方法を研究しています。下中央図では,時間経過に伴って徐々に高画質のCT画像が再構成される様子がみられます。その他,その画像再構成法の実用化に向けて,右下図の集積回路(VLSI: Very Large Scale Integration)の製作にも取り組んでいます。
Sinogram CT Image
測定データ 再構成されたCT画像 集積回路

主な論文
  1. Continuous-time image reconstruction using differential equations for computed tomography
  2. Common Lyapunov Function Based on Kullback-Leibler Divergence for a Switched Nonlinear System
  3. Implementation of continuous-time image reconstruction system in analog electronic circuit
香川大学以外の共同研究者:
 徳島大学 吉永 哲哉 教授

 

強度変調放射線治療計画

強度変調放射線治療(IMRT: Intensity Modulated Radiation Therapy)は,身体に照射する放射線の角度と強度を調整して,がん細胞には十分な放射線量を照射するとともに周囲の正常組織に照射される放射線量をできる限り抑制するがん治療法の一つです。「がん細胞へ集中的に放射線を照射する」かつ「その周囲にある正常組織に照射される放射線量はなるべく抑制する」という制約の下で放射線の照射角度と強度を設計する問題は,逆問題とよばれる数学的な問題に置き換えることができます。当研究室では,その逆問題を,数理モデル(微分方程式や差分方程式)を使って効率的に解くための方法を研究しています。
下の例は,左図における青色領域を治療ターゲット(PTV: Planning Target Volume)に,その他の着色領域(白,黒以外)を正常組織(OAR: Organ At Risk)にそれぞれ設定したときのIMRT計画問題を,微分方程式を用いて解いた結果です。中央の線量分布図において,橙色領域は放射線量が高いことを表しており,治療ターゲットのみに放射線を集中的に照射できていることがわかります。右の線量体積ヒストグラムは,PTVとOARそれぞれにどの程度の放射線が照射されているかをグラフ化したものです。
phantom Dose Distribution Map Dose Volume Histogram
問題設定 線量分布図 線量体積ヒストグラム

主な論文
  1. Continuous-time method and its discretization to inverse problem of intensity-modulated radiation therapy treatment planning
  2. Dose-volume constrained optimization in intensity-modulated radiation therapy treatment planning
香川大学以外の共同研究者:
 徳島大学 吉永 哲哉 教授

 

放射能濃度分布推定

2011年に発生した福島第一原子力発電所事故によって大量の放射性物質が周囲に拡散してしまいました。 汚染土壌等の除染計画を効率よく進めるためには,土壌に含まれる放射能を簡便にモニタリングできるシステムが必要です。 当研究室では,他大学や企業の放射線専門家と協同し,機械学習システムを有効利用した放射能濃度分布推定システムの開発を目指しています。

主な論文
  1. Feasibility study on the fusion of phits simulations and the dlnn algorithm for a new quantitative method of in-situ multiple-channel depth distribution spectrometry
香川大学以外の共同研究:
 つくば国際大学 福士 政弘 教授
 東京都立大学 井上 一雅 教授
 徳島大学 阪間 稔 教授
 株式会社アドフューテック

 

複雑系のレジリエンス

情報通信ネットワークや生体の一部の機能を数理モデル(微分方程式や差分方程式)として表現したものを複雑系とよぶことにします。複雑系では,元々のシステムにとって好ましい状態になるようにパラメータが設定されています。例えば,私たちの心臓は一定リズムで鼓動するように適切に制御されていますが,加齢や外部ストレス等から生体機能の一部に変化が生じることによって,心臓が好ましくない状態に陥ることがあります。例えば,交互脈は好ましくない状態の一例で,心臓数理モデルの解析から,分岐とよばれる現象を介して発生することが知られています。当研究室では,適切な状態から不適切な状態へと移行しないようにするための制御方法(すなわち,分岐現象の発生を回避するための方法)や,不適切な状態から適切な状態へと自己回復できる(レジリエンス性のある)システムを構築するための基礎研究を行なっています。

主な論文・著書
  1. Bifurcation avoidance control of stable periodic points using the maximum local Lyapunov exponent
  2. Parametric Control to Avoid Bifurcation Based on Maximum Local Lyapunov Exponent

 

光ピンセットシステム

産業や医療の分野において,顕微鏡下で微小物を操作するマイクロ操作技術が必要とされています。光学顕微鏡下の非接触マイクロ操作技術として光ピンセット技術があり,その原理は次のとおりです。レーザ光を対象物に照射すると,微粒子と周囲の媒質との屈折率の違いに基づいて光子の運動量が変化します。その運動量の変化によって生じる界面上の反力を巧く利用することで微小物を捕捉することが可能となります。当研究室では,光ピンセット技術と画像再構成技術を用いて,顕微鏡下で撮影した投影像から,微小物の外観や内部構造を計測するための研究を行なっています。

主な論文・著書
  1. Dual-Arm Visuo-Haptic Optical Tweezers for Bimanual Cooperative Micromanipulation of Nonspherical Objects

 

ラットの脳波解析

脳の一部である海馬は,エピソード記憶において重要な役割を果たしています。海馬のCA1領域に生じる脳活動電位信号にはリップル波が含まれ,リップル波の数は情動性のエピソードを経験することにより増加することがラットを使った動物実験により確認されています。そのリップル波の形状が経験エピソードの種類に紐づけられているのではないかという仮定の下,当研究室では,信号処理手法及び人工知能システムを用いてラットの海馬CA1において測定した脳活動電位信号を解析し,経験エピソードとリップル波との関係性について研究しています。

主な論文・著書
  1. 投稿中
香川大学以外の共同研究:
 山口大学 美津島 大 教授
 山口大学 村井 礼 准教授
 山口大学 石川 淳子 助教

 


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