松田研究室

研究の内容

破壊を知り,安全性を科学する

高性能・高機能の機械構造物の開発に伴い,その用途に応じて様々な材料が使用されています。 構造物には高い安全性や信頼性が要求されるため,使用する材料が 「どのようにして破壊するのか(破壊メカニズム)」, そして「どのくらいまで使えるのか・耐えられるのか(強度や寿命)」を 理解することが重要です。

画期的な新しい材料が開発されたとしても, その性質や破壊の仕組みを十分に理解しないまま使用することは大変危険です。 様々な試験や解析を通して材料をよく理解したうえで使用することが, 安全な機械構造物を実現するために重要です。

本研究室では,構造用材料,主に セラミックス炭素繊維強化プラスチック(CFRP) を対象として,力学的試験,理論解析,確率論およびデータサイエンスを用い, 材料の破壊メカニズムや強度・寿命を調査して 「安全性」をサイエンスしています。 いわば「材料のお医者さん」であり, 破壊を専門とする「破壊屋(Hakai-ya)」の研究室です。

お気に入りの名言 「創造の前に破壊あり…だ」 (ドラゴンボール超 破壊神 ビルス 名言集より)

松田研究室の研究イメージ

松田研究室の材料強度・破壊・信頼性研究を表現したイメージ画像

本研究室では,CFRPやセラミックスなどの材料を対象に, 実験による破壊現象の観察,強度・寿命評価, 確率過程による理論解析, AE(Acoustic Emission)などの実験データを利用した データサイエンス, さらにCFRPのリサイクル技術などについて研究しています。

※上の画像は,本研究室の研究内容を分かりやすく視覚的に表現するために 作成したイメージ画像です。 実際に使用している試験装置・試料・実験結果・解析結果・実験データを そのまま示したものではありません。

主な研究テーマ

本研究室では,材料の「破壊」をキーワードとして, 実験・理論解析・データサイエンスを組み合わせながら, 主に以下の研究に取り組んでいます。

● CFRPの加工・損傷・破壊
CFRPのせん断加工(パンチプレスやせん断切断)を対象として, 加工時に発生する変形,損傷,層間はく離,破壊のメカニズムを研究しています。 AE計測やデータサイエンスによる損傷状態の解析にも取り組んでいます。

● CFRPのリサイクル
使用済みCFRPから炭素繊維と樹脂を分離し, 炭素繊維を再利用するためのリサイクル技術を研究しています。

● 確率過程・データサイエンス
マルコフ過程などの確率過程論を材料の損傷・破壊問題に応用しています。 また,AEなどの時系列データに隠れマルコフモデルを適用し, 観測データから材料内部の状態や状態遷移構造を推定する研究にも取り組んでいます。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)および プラスチックに関する研究

CFRPのせん断加工法の研究

CFRPのせん断加工法の開発

高比強度を有するCFRPは, 自動車などの大量生産部品への適用が拡大しています。 基本的にはニアネットシェイプで成形されますが, その後のトリミングや穴あけなどの二次加工は必要であり, 加工時間(タクトタイム)の短縮が求められています。

金属材料では短時間で二次加工を行う技術がすでに広く利用されていますが, CFRPは金属とは大きく異なる材料です。 金属材料では塑性変形を利用した加工が可能ですが, 異方性を有するCFRPは脆性的な破壊挙動を示すため, CFRP特有の変形・損傷・破壊を考慮する必要があります。

本研究室では, せん断加工を対象として, CFRPに生じる変形・損傷・破壊について 実験的および理論的に研究しています。 さらに,AE(Acoustic Emission)などから得られる実験データに データサイエンスを適用し, 加工中に発生する損傷現象を理解する研究を進めています。

<データサイエンスへの取り組み>

せん断加工中に計測されるAE(Acoustic Emission)などの 時系列データを解析し, 層間はく離をはじめとするCFRP内部の損傷発生や その進展過程を明らかにする研究に取り組んでいます。 実験観察だけでは捉えにくい損傷現象を, データから理解することを目指しています。


<主な研究成果>

・Compos A,49(2), 110108(2026)
・日本複合材料学会誌,210,p.48-56(2023)
・J. Compos. Mater., 55(28), pp.4111-4124 (2021.12)
・日本複合材料学会誌,42(1), pp.13-22(2016)

<研究助成>

・本研究の一部は公益財団法人 京都技術科学センター 2022年度研究開発助成の助成を受けました。
テーマ: 衝撃パンチング穿孔を有するCFRP積層板の インピーダンスモニタリングによる引張損傷挙動の解明

・本研究の一部は天田財団 一般研究開発助成 AF-2021018-B3の助成を受けました。
テーマ: CFRP積層板のパンチプレス細穴加工法の基礎研究

・本研究の一部は天田財団 奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017039の助成を受けました。
テーマ: CFRP積層板のパンチプレス加工に及ぼす マイナスクリアランス効果の解明
天田財団

・本研究の一部はスズキ財団 平成29年度 若手科学技術研究助成を受けました。
テーマ: 異方性CFRP積層板の落錘衝撃アシストによる パンチプレス加工法の開発

・本研究の一部はスズキ財団 2024年度 科学技術研究助成(一般)を受けました。
テーマ: パンチ加工の最適化に向けた AEデータのデータサイエンスによる 層間はく離発生同定手法の開発
スズキ財団


・本研究の一部は公益財団法人JKA 2021年度機械振興補助事業 若手研究の助成を受けました。
テーマ: CFRPのためのインパクトパンチプレス加工法の最適化補助事業

成果公表

JKA KEIRIN
CFRPのリサイクル技術に関する研究

CFRPのリサイクル技術に関する研究

CFRPは,航空機や自動車などへの適用が拡大しています。 その一方で,自動車などの製品は一定期間使用された後に廃棄されるため, 将来的には大量の使用済みCFRPが排出されることが予想されています。

そのため,経済性および環境負荷低減の観点から, 使用済みCFRPをリサイクルする技術が求められています。

そこで本研究室では, 得意とする「破壊」を応用し, 電気的および熱的な作用を利用して, CFRPを構成する炭素繊維と樹脂を分離する技術の開発を進めています。


<受賞>

・公益財団法人エレキテル尾崎財団 第31回源内賞

<研究成果>

・Compos. Struct. 385 (2026.6), 120210
・Mater. Letters 381 (2025.2), 137786
・Compos. A 178 (2024.3), 107991
・Adv. Compos. Mater. 32(4), 2023, pp.519-531
・Compos. Struct. 251 (2022.7), 115603
・Sep. Purif. Technol. 251 (2020.11)
・Compos. Struct. 234 (2020.2), 111665
・Sep. Purif. Technol. 231 (2020.1), 115885

<研究助成>

本研究は科学研究費 基盤研究(C) (26820015,22K04714) 研究助成を受けました。
テーマ: 電気インピーダンス法を併用した CFRPのバイポーラ型電気分離メカニズムの解明

科学研究費助成事業




本研究の一部は近藤記念財団 令和2年度(第7回)研究助成を受けました。
テーマ: 電気ショックを援用した熱分解法による CFRPリサイクル技術の最適化

近藤記念財団



・本研究の一部はスズキ財団 令和2年度 一般科学技術研究助成を受けました。
テーマ: ハイブリッド熱分解法による CFRPリサイクル技術の最適化
スズキ財団


数理モデル・データサイエンスに関する研究

確率過程を材料損傷・破壊問題へ応用する研究

確率過程の応用

工学分野における信頼性を確保するためには, 対象物が時間とともに変化していく現象を 確率論的に理解する必要があります。

材料の損傷や破壊は, 同じ条件であっても必ずしも毎回同じように進むわけではありません。 このような不確実性を含む現象に対し, 本研究室ではマルコフ過程などの 確率過程論を応用し, 材料・構造物の損傷・劣化・破壊現象を 数理的に記述する研究を進めています。

<マルコフ過程による理論解析>

材料の状態をいくつかの損傷状態として表現し, ある状態から別の状態へ移る確率を 「遷移確率」として記述することで, 損傷の進展や最終的な破壊に至る過程を 確率論的にモデル化します。

<隠れマルコフモデルとAEデータ解析>

実験で計測されるAE (Acoustic Emission)などの時系列信号から, 材料内部で進行する損傷状態を推定するため, 隠れマルコフモデル (Hidden Markov Model:HMM) を利用した解析にも取り組んでいます。

材料内部の損傷状態そのものを直接観察することが難しい場合でも, AE信号などの観測データから潜在的な状態を推定し, それらの状態間の遷移構造を解析することで, 材料がどのような過程を経て損傷・破壊に至るのかを データに基づいて理解することを目指しています。

<確率過程応用研究分科会>

日本材料学会 信頼性工学部門委員会において 「確率過程応用研究分科会」を発足し, 実在する材料・構造物の損傷・破壊問題を対象として, 確率過程論を応用する研究を進めています。

分科会Web

日本材料学会 確率過程応用研究分科会

<研究成果>

・Int. J. Mech. Sci., 314 (2026), 111370.
・材料,Vol.75,No.7 (2026).
・材料,Vol.73,No.3 (2024).
・材料(連載講座),Vol.70,No.10 (2021), pp.782-787.

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テレビで放送されました

2023年8月2日, テレビ新広島「発見!アドレナ人」で 本研究室が紹介されました。 ホーコス株式会社が公開しているYouTube動画を 左の画像から視聴できます。