AlNの粒界相に導電性の希土類酸炭化物を析出させることにより、絶縁体であるセラミックスに導電性を付与することに成功した。作製された導電性AlNは右の写真のように、放電加工が可能であった。
導電性AlNの放電加工

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私たちの研究室では、 色々な機能を持つ非酸化物のセラミックス構造材料 について研究を行っています。

             構造用セラミックスって?
身の回りにあるセラミックス構造材料としては耐熱部品や電子基板に使用されているSiO2、Al2O3、ZrO2などの酸化物が一般的でありますが、酸素(O)より周期表上で1つ中によった窒素(N)、およびさらに一つ中によった炭素(C)との化合物である窒化物(Si3N4、AlNなど)や炭化物(SiC、TiCなど)も新しい機能を持つセラミックスとして開発が進んでいます。

            なぜ非酸化物なのか

原子同士の結合は、酸化物<窒化物<炭化物の順にイオン結合成分よりも共有結合成分が高くなるため強い結合が形成されます。材料内の結合が強くなると、強度、耐熱性、熱伝導度が高くなります。
例えば、
Siの場合、
SiO2Si3N4
SiCの順に硬度、耐熱性、熱伝導度が高くなります。

 研究室での取り組み

粒界相制御による絶縁性セラミックスの導電化
  高熱伝導を示すAlN、Si3N4は絶縁体ですが、電子機器製造分野で使用するときは電気伝導性も望まれることがあります。絶縁体セラミックスに電気伝導性を付与する方法としては、導電性の第二相粒子を30体積%ほど添加することが一般的に行われていますが【図1】、このような多量の第二相の添加は非酸化物の優れた特性を損なうことが問題となっている。そこで我々の研究グループでは、わずか3vol%以下の量でも三次元的に焼結体中を伝搬している粒界相を導電経路として用いる研究を行っています【図2】。

 粒界相制御による導電性セラミックスの絶縁化
 従来の粒子分散法では、導電性セラミックスを絶縁化するために、約70vol%以上の絶縁体第二相が必要でした。しかしながら、粒界相の三次元的に連続してつながる性質を利用することによって、セラミックスの高抵抗化も可能になります。例えば、半導体性質のあるSiCに助剤を添加して焼結する場合、通常焼結後に粒界相は【図2】や【図3】の様に、三重点や多点粒界中に残存しますが、焼結条件および助剤組成・量を最適化することによって、SiCの二面粒界にまで絶縁性物質を残存させることが可能となり、導電性セラミックスを高抵抗化することができます【図4】。
  高熱伝導性有機無機ハイブリッド材料
 一般的に、エポキシなどの絶縁体有機樹脂は0.1〜0.5W/mK程度の低熱伝導物質であるため、電子部品の基板などに用いる場合、放熱性能が問題になっている。この低熱伝導の有機樹脂の熱伝導を向上するために、高熱伝導非酸化物であるBN、Si3N4、AlN、SiC粒子をフィラーとして添加する研究を行っています。これらの非酸化物粒子を異方性の高い柱状や板状にすることによって、長い高熱伝導パスを形成することができます。また反対に異方性を少なくし等軸状にした場合は、充填率をあげることができます。それぞれの応用に合わせてフィラー形状を検討し、高熱伝導性ハイブリッド材料を開発する研究を行っています。
 図5のSEM写真は、エポキシ中に下の写真のβ-Si3N4ナノワイヤーを60vol.%添加して、ワイヤーの配向方向で熱伝導率8.7W/mK、配向に垂直方向で6.0W/mK達成したものです。

        
 セラミックスナノ複合材料
  Si3N4AlN、SiCなどの非酸化物材料は、高強度、高硬度、高ヤング率、耐熱性、高熱伝導性など優れた特性を有していますが、他の材料と複合化すると新しい機能の付与、または更なる特性の改善が可能になる場合があります。本研究室では、BNナノ粒子をSi3N4、AlN、SiC、Al2O3マトリックスに複合化することにより、高強度で優れた耐熱衝撃性を持つマシナブルセラミックスの開発に成功している。

【BNナノ複合材料の作製イメージ】


【BNナノ複合材料で観察される擬塑性変形と良好な快削性】