日常ものづくり


以下の日常ものづくりのための工房について,目的,内容,基本設備,ものづくり教育との関係の観点から紹介を行います.
  機械・材料工房
  デジタル工房
  デバイス・材料工房



機械・材料工房
1.目的 
機械・材料工房は,小型の機械部品の加工を行うための機械加工 セクション,金属材料・セラミック材料などの作成と観察・測定を行 うための材料セクション,および機械装置の組立や走行実験等に利用 できるフリースペースセクションの3つから構成されます.機械・材 料工房では,これらのセクションでの作業を通じてものづくりの基礎 を習得することを目的としています.
2.内容 
機械加工セクション
学生・教官が容易に扱える汎用的な機械加工機,機械加工用具を中心 に配置するとともに,自由曲面を含む多少複雑な形状の部品の加工に も対処できるようNCフライス加工機を設置しています.これらの機械 加工機,加工用具により,小型の機械部品,実験装置の製作が可能で ある.研究室で使うオーダーメイドの実験装置などは,完成後も手直 し等が必要となりますが,それらの作業を教官・学生が自ら行える環 境を目指しています.
材料セクション
業の基幹を支えている金属材料やセラミック材料の作製を行わせ, その作製組成や処理による材料の形態上の違いや硬度の変化を体験さ せ,特に,微妙な組成の変化で形態や硬度が変化する様子を観測させ ることができるような基本設備を配置しています.  このようなテーマは金属・セラミック材料設計の基本であり,教育 上欠かすことができません.特に,熱処理による変態や硬度の変化は 金属・セラミック材料加工の過程の理解を促すと考えられます.もの づくりにとって金属・セラミックは古い材料と考えられがちでありま すが,それらは今日もなお進歩し続けています.さらなるブレークス ルーを21世紀に達成するためには,学生がこのような材料の製作・ 加工に習熟していなければいけません.
3.基本設備 
機械加工セクション


※ 工房利用時には、利用記録簿への記録をお願い致します。
記入例


写真入りの設備紹介はこちら
NC旋盤滝澤鉄工所 TC-200
標準/最大加工径
最大加工長さ
主軸最高回転速度
225 / 340mm
607mm
3200rpm
汎用的な旋盤加工とともに, CADによって設計された加工データに基づいたNC加工
2006年度導入

NCフライス盤大阪機工 MH2NCV
移動量
テーブル作業面
主軸回転速度
X軸 720mm , Y軸 300mm , Z軸 450mm
1310 × 300mm
60 〜 1800rpm / 12段切換
汎用的なフライス加工とともに, CADによって設計された加工データに基づいたNC加工

卓上精密旋盤メカニクス  TNL-610GE
主軸回転速度
主軸貫通孔
70 〜 1400rpm / 12速
40mm
外周,中ぐり,ネジ切りなどの汎用的な軽切削加工

卓上フライス盤メカニクス  TNF-185
移動量
テーブル作業面
主軸回転速度
X軸 260mm , Y軸 140mm , Z軸 260mm
450 × 180mm
360 〜 3000rpm / 無段変速
汎用的な軽切削のフライス加工

卓上ボール盤芝浦電産 DPN-13
穴あけ
回転数
最大直径13mm
520〜2600rpm / 5段階
小径の穴あけ加工

タッピングポール盤ニチレン SHT-14
ネジ立て
穴あけ
回転数
10mm
13mm
175〜1960rpm / 6段
穴あけとタッピング加工

油圧式高速ノコ盤津根精機 PSB210U
切断能力
斜め切断
丸材 最大φ210mm, 角材 最大190mm×190mm
(角度 45゜)最大 120×190mm
主に大径の丸棒鋼材の切断加工

電気炉デンケン / KDF P100
炉内有効寸法
使用温度範囲
350(W)×300(H)×500(D) mm
100 〜 1000℃ , 0.5℃
圧延等の強加工時の加工ひずみの除去,高分子部品の溶着加工

ドリル研削盤良友 LEA104-414
ドリル径φ8.0〜φ32.0mm(φ15.0以上は,アダプタ使用)
穴あけドリルの研ぎ直し

グラインダ淀川電機 FG-265T
砥石寸法
砥石種類
φ205×19×φ15.88mm
A36P,A60P
切削加工後の端面のバリとり,旋盤などの切削工具の研ぎ直し,工具形状の変更

平面研削盤三井ハイテック MSG-250HMD
テーブル移動量
テーブル作業面
砥石最大寸法
左右(手動 / 油圧)500/480mm  前後(手動 / 油圧) 250/230mm
480mm×200mm
φ205×20×φ31.75mm
基準平面の加工

工具顕微鏡ニコン MM-60
観察倍率接眼10,対物 2 / 5 / 20 / 50 倍
形状測定機能付き
加工面の観察,加工寸法計測

精密切断機平和テクニカ,HS-25A
標準切断能力
テーブル移動量
スピンドル移動量
自動切り込み速度
鋼管φ25mm,丸鋼φ20mm,平鋼 厚さ5mm×巾50mm
切り込み方向150mmm,左右方向60mm
上下方向50mm
3〜57mm/min
小径の丸棒,アングル材,角材などの主に鋼素材の切断

折曲機盛光 モリペットV-2
折り曲げ能力 幅1200mm 厚さ0.5mm(鉄板)
板材を任意の角度に折り曲げる。(手動)
2006年度導入

板金切断機(シャーマシン)盛光 足踏み切断機102型
切断能力 幅1000mm 厚さ2.0mm(鉄板)
板材を切断する。(手動)
帯鋸に比べ、直線的に切れるため板材の切断に適する。(厚さに制限あり)
2006年度導入

電動切断機東芝 MCS-305B1
切断能力 最大直径φ100mm
鋼材の切断作業。パイプ、アングルなど、軟鋼材の切断加工に利用可能

CAD/CAMシステム浜松合同 ナスカ(ミル/旋盤)
仕様 二次元CAD及び、NCフライスとNC旋盤用CAMシステム
CAD及びCAMシステム。NCフライスおよびNC旋盤用のNCプログラムを作成可能である。
2006年度導入

材料セクション
・走査電子顕微鏡(デバイス・材料工房に設置)
4.ものづくり教育との関係
機械セクション
標準的な機械加工を教官・学生が自ら実践することにより,金属, 非金属材料の加工・切削の容易さ,難しさ,適切な加工方法の選択,要求 される寸法精度などに対する理解と感覚を養うことが期待されます.
材料セクション
研究的にも金属・セラミック材料は非常に精力的に行われていますが, 先端的な材料開発には地道に材料組成を変えて材料特性の変化を追跡しなけれ ばいけません.その場合に,このような材料計測の基本的装置が完備されてい れば,材料開発のポテンシャルを非常に高くすることが可能で,ひいてはすば らしい金属・セラミック材料の出現をもたらすものと考えられれます.また, 機械・材料工房として加工部分と一体になったスペースでありますので,学生 に金属材料やセラミック材料の作製と加工及びその特性の評価を系統的に学ば せることが可能であります.これにより,学生にものづくりへの興味を喚起さ せ,研究レベルで金属・セラミック材料の作製を行う際の基礎を与えることに なり,教育的効果が多大であると期待できます.


デジタル工房
1.目的
デジタル工房では,主として電子回路・機器の製作を通して,学生がはんだ付けの習得,各種測定機器の使用法,回路動作の解析手法などを身につけることを目的とします.
2.内容
ホビー的なアナログ回路,基本論理回路などから,シングルボードコンピュータ,LED変調通信器,画像処理ボードなど,学生のレベル・興味に応じて,様々な種類の電子回路の製作および解析を行うことができます.
3.基本設備
主な機器等は,以下の通りです.
工房に用意されている機器等は,以下の通りです.

基本電子部品,ICなど2 セット
デバイスビューア1 セット
ハンダ吸い取り器5 セット
工具セット10 セット
ドリルセット2 セット
シャーシ・パンチセット1 セット
タップセット10 セット
タップハンドル3 セット
防塵メガネ3 セット
配線デバイス2 セット
ハンダコテ先クリーナ40 セット
電子機器用ハンダ20 セット
シャーシリーマ6 セット
ワイヤーストッパ10 セット
AVタップ30 セット
ベルトディスクサンダ1 セット
オシロスコープ16 セット
ファンクションジェネレータ4 セット
デジタルマルチメータ16 セット
ロジックアナライザ1 セット
直流安定化電源20 セット
マイクロスコープ1 セット
ビデオ一体型テレビ1 セット
パソコンシステム2 セット
パソコン用ハブ2 セット

4.ものづくり教育との関係
信頼性情報システム工学実験1・実験2では,デジタル工房でアナログ・デジ タル電子回路の実験を行っています.


デバイス・材料工房
1.目的
デバイス・材料工房では,先端的ものづくりの基礎を学生に習得さ せることを大きな目的の1つにしています.最近のものづくりを軽視す る風潮を打開するため,学生に実際にものを作らせ,製作したものの特 性を評価して,目的とするデバイス・材料の製作プロセスにフィードバ ックする過程を体験してもらうことを重視しています.
2.内容
先端的なデバイス・材料の開発とその教育がこの工房の目的とするところです.学生には最近注目されている薄膜材料を真空蒸着装置により作らせる計画です.半導体,誘電体,金属などの薄膜を作成させ,薄膜形成のノウハウを習得させるとともに,作成した薄膜の基本的な物性を測定して評価する方法論を学ばせます.特に,現代技術の進歩の象徴ともいえる半導体については重点的に実習を行う予定です.
3.基本設備
・ドラフトチャンバ
試料の化学的処理
・真空蒸着装置(アネルバ社製)
半導体,誘電体,金属などの薄膜の作成
・電磁石
薄膜材料の評価としてのホール効果の測定
・分光器(日本分光製)
半導体薄膜の発光特性とその光機能性の評価,誘電体薄膜の非線 形光学的機能の評価,金属薄膜の電子状態の膜厚による変化などの 機能計測
・X線回折装置(XRD) :XRD-6100(島津製作所製)
 X線回折装置(XRD)は大気雰囲気で物質の非破壊分析が可能です。物質の定性分析、格子状数の決定や応力測定などができます。また、ピークの面積計算などから定量分析が可能です。
 さらにピークの角度広がりや、プロファイルなどから粒子径・結晶化度・精密X線構造解析など、様々な分析が可能です。
 縦型高精度ゴニオメータを搭載していますので粉末や薄膜、固定しにくい資料、溶解しやすい資料など、多用な資料の測定が可能です。  
 利用中、X線発生時にはドアロック機構が作動しますので、高い安全性のもと実験を行えます。
<主な特徴>  1000°/分の高速早送り
 ±0.001°の高精度角度再現性を実現した縦型ゴニオメータ搭載
 駆動機構は独立二軸駆動でθ-2θ運動、2θ、θ軸単独測定の選択が可能。特に薄膜測定に効果を発揮します。

・走査型電子顕微鏡:JSM−5500(日本電子製)
・エネルギー分散型X線分析装置(EDX)(EDAX製)
走査電子顕微鏡(SEM)は基礎研究分野から材料開発、材料の検査・評価/欠陥解析・品質管理・分析検査に必要なツールとして、研究開発部門から製造現場まで幅広く使用されています。JSM-5500はこれらのニーズに幅広く答えることができる高性能汎用走査電子顕微鏡です。

EDXは、試料表面の微小部の元素分析を行う装置です。 走査原子顕微鏡と同様、電子ビームを試料にあてると、特性X線が試料から飛び出します。 この特性X線は元素の種類により、それ固有の波長を有しています。これら特性X線を検出することにより、試料に含まれている元素を知ることが出来ます。また各々のエネルギーについて強度を測定し、標準強度と比べることによって定量分析も可能となります。

・計測セット
 パルスジェネレータ,オシロスコープ,ファンクションシンセサイザ, ディジタルマルチメータ
薄膜の電気特性の測定
・その他(什器など)
薬品保管庫,低温冷凍庫
4.ものづくり教育との関係
作製したデバイス・材料の評価方法としてはホール効果測定,蛍光特性測定,電気的測定,回路素子的測定など多様な観点からの方法を用い,デバイス・材料評価の基礎を詳しく学習させます.このように,デバイス・材料の製作と評価を一体化させたシステムが最近は少なくなっています.製作と評価の分離は製作側と評価側のそれぞれの意識を乖離させ,ひいてはものづくりへの意欲の減退につながっていると思われます.
従って,この工房のように製作と評価を不可分に一体化した教育システムの導入がものづくり教育への大きなインパクトになると考えられます.
さらに,このデバイス・材料工房はMBE室,回路製作室,RP室など研究レベルで先端的デバイス・材料の開発研究用の装置が入った部屋に隣接していますので,研究レベルでのデバイス・材料の評価を行う場としても活用できます.また,学生がそのような研究開発の現場に直接接することができるますので,教育的効果も大きいと考えられます.

(2003/05/29追記)
 走査型電子顕微鏡JSEM5500Sの使用マニュアルが製作されました。国重教授または実験実習係事務にありますので閲覧したい方はご連絡ください。


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