2008年度DV-Xα夏の学校



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 第三回DV-Xα夏の学校が終了いたしました。キャンプ場という閑静な山の中で、朝から晩まで5日間、じっくりと量子材料科学について勉強を行いました。参加者の皆様は、ご協力大変有り難う御座いました。また関西学院大学の早藤先生には、会場を快く提供していただきまして、心から感謝いたします。


概要

DV-Xα研究協会第三回夏の学校:「量子材料科学」セミナー

主催

DV-Xα研究協会(HP)

協賛

社団法人日本化学会(HP)
錯体化学会(HP)
日本高圧力学会(HP)
社団法人日本鉄鋼協会(HP)
社団法人日本材料学会(HP)
日本表面化学会(HP)
社団法人資源・素材学会(HP)

対象

大学院生と若手研究者(20 名以内)

日時

平成20年8月18日(月)午後1時から22日(金)正午まで(4泊5日)

場所

関西学院千刈キャンプ(HP)、(詳細pdf
〒669-1506 兵庫県三田市香下1817-1(場所はこちら
電話:0795-63-5233
JR三田駅(福知山線(JR宝塚線))または神戸電鉄三田駅(三田線)
→(阪急田園バス(午後は神姫バス)東部行き、20分)
→羽束川(ハツカガワ)停留所→千刈キャンプ

講師

足立裕彦、那須三郎、森永正彦

内容

1.序論
2.原子構造理論と電子状態計算の実習
3.分子軌道論と簡単な分子の軌道計算
4.金属錯体の電子状態計算と化学結合論
5.セラミックス、金属材料の量子化学

費用

参加費(宿泊費、資料代込み)
学生 45,000円
一般 60,000円 (DV-Xα研究協会又は協賛学協会の正会員)
70,000円 (非会員)

※計算実習を行うので各自パソコンを持参のこと。


参加者リスト


写真のページ



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第三回夏の学校「量子材料科学セミナー」実施報告

香川大学工学部 石井知彦

 DV-Xα研究協会では、若手の研究者および大学院生を対象とした量子材料科学セミナーを、夏の学校という形式で開催しています。この試みは、2006年8月から始められました。約20名程度と夏の学校としては小規模なのですが、2006年の第一回夏の学校では岐阜県の下呂温泉に、2007年の第二回夏の学校では兵庫県の淡路島に、それぞれ全国から若手研究者と学生の皆さんに集まっていただきました。5日間昼も夜もじっくりと議論することができ、また参加者同士の交流も深まり、大変好評でした。この様なセミナーを是非とも毎年開催したいという願いから、今年も第三回夏の学校を開催することとなりました。その様子についてご報告させていただきます。

 DV-Xα研究協会とは当然深い関わりがあるのですが、この夏の学校では内容がDV-Xα法の理論や応用に偏るということはなく、全般を通して量子材料科学の基本をじっくりと学ぶためのスケジュールが組まれています。足立先生が作成された教科書は下記の12章から構成されていますが、那須先生、森永先生の講義を含めておおよそ5日間の夏の学校の期間内で全てを網羅できるようなカリキュラムになっています。

足立先生の講義
第1章 序論
第2章 波動力学
第3章 水素原子の波動力学
第4章 多電子原子の原子軌道
第5章 分子軌道論
第6章 簡単な分子の分子軌道
第7章 オキソアニオンの分子軌道
第8章 遷移金属錯体の電子状態と化学結合
第9章 金属酸化物の電子状態と化学結合
第10章 自由電子模型に基づいた量子論
第11章 ブロッホ関数
第12章 多電子状態理論

那須先生の講義
原子核・放射線を用いた材料科学研究

森永先生の講義
電子レベルからの合金設計

 他にも、DV-Xα法の計算実習の時間がたっぷりと盛り込まれています。さらに足立先生の教科書は、付録も充実しており、角運動量・Noumerovの方法・DIRACFGの使い方・分子の対称性・軌道の混成・分子軌道計算の実際・電子分光・イオン結晶中の静電場・原子間距離・原子軌道の重なり積分・スピン分極・Xα法における交換ポテンシャル・原子核近傍の電子構造、なども詳しく学ぶことができます。大学の授業や研究室での議論は、どうしても物質も現象も限られていて、狭い知識しか学ぶことができないのですが、年一回のDV-Xα研究会では、幅広い物質と現象が議論されるため、広く(浅く)知識をつけることができます。それに加えて、この夏の学校では、あらゆる物質や現象に共通する量子材料科学とその電子論を基本から学ぶことができるため、個々の独立した知識を互いの関連性と結びつけながら理解を深めていくことができます。しかも5日間というある程度まとまった期間で集中的に学習できるため、効率よく、あらゆるジャンルの知識を身につけることができます。もしも独学で教科書を読んでいたら半年や一年かかってしまう内容が、5日間という短期間で集中して勉強できるということが最大のメリットです。

 さて、今年の夏の学校は、兵庫県の三田市で行われました。関西学院の「千刈キャンプ場」を5日間お借りして、例年どおり20名の参加者を募集して行いました。実は、2004年のDV-Xα研究会が、すぐそばの関西学院セミナーハウスで開催されたのですが、そのセミナーハウスは残念ながら現在は閉鎖されてしまい、このキャンプ場のみが運営を続けています。千刈キャンプ場は、携帯電話の電波も通じないほど人里離れた山の中にあるのですが、とても大きなキャンプ場で、静かで気持ちよく、景色も最高に素晴らしい場所でした。5日間こもって量子化学を勉強するには、これ以上の環境はないと思います。また食事のレベルがとても高く、「本当にキャンプ場?」と何度も疑いました。もちろんキャンプ場ということで、規則は大変厳しいものでした。朝起床すると、まず食事の前に玄関前広場に集まって、みんなで歌を歌いながら旗を揚げます。朝食を7時半に頂いた後、午前中の講義を正午まで行い、昼食後午後5時まで講義を行った後、また広場に集まって、全員で旗を降ろします。夕食は午後5時半、消灯が10時半ととても規則正しい生活を送りました。キャンプ場の規則でアルコールが禁止と言うこともあり、中で大騒ぎをすることが出来なかったのですが、キャンプ場の山を下り、歩いて10分くらいの所にあるレストラン(キッチン千苅)に毎日行き、懇親会と称して参加者同士の親睦を深めました。さらに卓球大会や夜の学校など、懇親会の後も各自活発に過ごしていました。

 参加者の多くが若い学生であるということもあって、また所属研究室が電子論的な議論を行っているなど、同じ境遇という連帯感もあって、学生同士はお互いに交流を深め、情報交換を活発に行っていたようでした。

 最後になりましたが、会場を快く、(格安で)提供してくださった関西学院大学の早藤先生と千刈キャンプ場のスタッフの方々には、大変感謝いたします。講師の先生方には、全くのボランティアで手弁当で講義を行っていただいており、心から感謝を申し上げさせていただきます。素晴らしい講義を行って下さった那須三郎先生と森永正彦先生、そして何よりも5日間立ちっぱなしで熱心にじっくりと丁寧に講義をしてくださった足立裕彦先生に心から感謝いたします。講義の内容とその完成度の高さ、豊富な経験と知識を惜しみなく参加者に提供してくださり、本当に有り難う御座いました。


DV-Xα夏の学校のホームページ
http://www.eng.kagawa-u.ac.jp/~tishii/Lab/DVSummerSchool/



Cr(CO)6のHOMO軌道(2t2g軌道)
EduDVVESTAを用いています)