2026年3月Galgotias大学(インド)
2026年3月17日・18日にインドのGalgotias大学を訪問した。本訪問は、インドにおける先進的IT教育拠点であるGalgotias大学との研究交流の深化(特にAI・データサイエンスおよび計算科学分野)を目的として実施されたものであり、講演、研究交流、施設視察を通じて、今後の共同研究の可能性を確認した。









学生の生活環境にも配慮が行き届いており、キャンパス内では安全な飲料水供給が整備されているなど、安心して学修に集中できる環境が整備されている。
新しく「Artificial Intelligence & Data Science」ビルが完成した。

多くの企業との連携ラボを見学し、実践重視のアクティブラーニング教育体制を見学した。

NVIDIAとの連携により構築されたAI・高性能計算基盤を視察した。同施設では実運用レベルのGPUクラスタ(スーパーコンピュータ)が整備されており、日本の多くの大学では研究段階でしか利用できない計算資源を、教育段階から活用している点は特筆に値する。

構内では医学系の新しい学部や宿泊施設(ホテル)の建設が進められている。

パリパラリンピックではGalgotias大学の学生が3名出場した。

株価がリアルタイムで表示されている。

Appleラボやドローンラボ等を視察し、学生が実際の企業開発環境と同等の条件下で教育を受けている点を確認した。
Apple Swift Student Challenge 2025 で10名受賞
〜Galgotias大学の実践的IT教育の成果〜
Galgotias大学におけるApple関連教育の成果として、Appleが主催する「Swift Student Challenge 2025」において、同大学の学生10名が受賞するという顕著な実績が確認された。本コンテストは、Worldwide Developers Conference(WWDC)の一環として開催される国際的なプログラミングコンペティションであり、世界中から多数の応募がある中で、受賞者は約350名に限られる極めて競争の激しいものである。そのような国際的な競争環境の中で、単一大学から10名の受賞者を輩出している点は特筆に値し、同大学の教育水準の高さを強く示すものである。
また、同大学はiOSアプリ開発分野において、世界の開発者コミュニティへの貢献度という観点からも高く評価されており、実践的な開発能力を有する人材の育成拠点として機能している。特に注目すべきは、同大学が主体的に構築・運営している「iOS Student Developer Program(iSDP)」であり、本プログラムはAppleおよびInfosysとの連携のもとで展開されている。すなわち、単なる外部支援に依存するものではなく、Galgotias大学自身が教育体系の中核として位置付け、実践的開発教育を体系的に実装している点に大きな特徴がある。
本プログラムにより、学生は在学中から実社会レベルのアプリ開発プロジェクトに取り組み、企画・設計・実装・発表に至る一連のプロセスを経験することが可能となっている。このような教育環境が、国際的なコンペティションにおける優れた成果につながっており、同大学が世界水準のIT人材育成拠点として機能していることを強く示している。

現在、デリー首都圏では新たにノイダ国際空港の整備が進められており、既存のインディラ・ガンディー国際空港の混雑緩和を目的とした第二の国際ハブ空港としての役割が期待されている。同空港は段階的な拡張を前提としており、将来的にはインド有数の大規模空港へと発展する計画である。
Galgotias大学は、グレーターノイダ地区に位置しており、同地域はニューデリー中心部から車で約1時間半程度の距離にある新興の学園都市であると同時に、IT関連企業の集積が進むいわゆる「インドのシリコンバレー」としての側面も有している。このような環境の中で、同大学は産学連携を基盤とした高度な教育・研究活動を展開している。
新たに建設が進められているノイダ国際空港は、このグレーターノイダに隣接する地域に位置しており、開港後は同大学へのアクセスが従来と比較して大幅に改善されることが見込まれる。これにより、海外からの研究者・学生の往来がより容易となり、国際的な教育研究活動のさらなる活性化が期待される。
さらに、Galgotias大学のキャンパス内では、大手ホテル企業の運営による宿泊施設の整備も計画されており、今後は国際会議や学術交流イベントの開催基盤が一層強化される見通しである。このように、空港インフラとキャンパス機能の両面における整備が進むことにより、同大学は国際的な教育・研究拠点としての機能を一層高めていくものと考えられる。
Galgotias大学訪問報告書
1.訪問の概要
本報告は、2026年3月17日および18日の2日間、インド・ウッタルプラデーシュ州に所在するGalgotias大学を訪問し、講演、研究交流、施設見学等を実施した内容について報告するものである。
2.インドのIT・テクノロジーの現状について
今回の訪問を通じて、インドにおけるITテクノロジー分野のレベルの高さを、極めて強く認識した。特に注目すべきは、世界の主要IT企業の経営層にインド出身者が数多く存在している点である。例えば、Google(およびAlphabet)のCEOであるスンダー・ピチャイ、MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラに加え、AdobeのCEOであるシャーンタヌ・ナラヤン、さらにIBMのCEOであるアルヴィンド・クリシュナなど、グローバルIT産業の中核を担う企業のトップがインド出身者によって占められている。
これらは偶然の結果ではなく、インドにおける理工系教育、とりわけ情報科学・工学分野における教育水準の高さと、極めて競争的な人材育成環境に起因するものである。すなわち、インドの大学教育は、単なる知識の習得にとどまらず、論理的思考力、問題解決能力、そしてグローバル環境での適応力を兼ね備えた人材を体系的に育成している。
このような背景を踏まえると、インドはもはや単なるIT人材の供給国ではなく、世界のデジタル社会を牽引する中核的人材を生み出す「人材創出拠点」と位置付けるべきである。したがって、今後の国際的な教育・研究連携において、インドの大学との関係強化は極めて重要であり、日本の高等教育機関にとっても戦略的な意義を有すると考えられる。
また、本訪問を通じて、日本とインドの理工系教育の在り方の違いについても強く認識した。インドの高等教育においては、企業との連携が教育の初期段階から組み込まれており、学生は在学中から実社会との接続を明確に意識しながら学修を進めている。すなわち、「何のために学ぶのか」という目的意識が極めて明確であり、そのことが高い学習意欲と実践的能力の育成につながっている。
一方で、日本の高等教育においては、基礎学力の高さという大きな強みを有するものの、教育と産業界との接続が相対的に弱く、学修内容と将来のキャリアとの関係が学生にとって必ずしも明確でない場合も少なくない。この構造的な違いが、結果として国際的な競争環境における人材輩出の差異の一因となっている可能性がある。
したがって、今後の日本の高等教育においては、基礎学力の強みを維持しつつ、産学連携の強化や実践的教育の導入を通じて、学生が早期から社会との接点を持つ教育体制の構築が重要であると考えられる。本訪問は、その具体的な方向性を示す貴重な機会となった。
3.受入体制について
本訪問に際しては、2026年3月17日および18日の2日間を通じて、Alok Singh Chauhan教授が、移動、宿泊、講演日程、研究打合せ、学内案内に至るまで、極めて丁寧かつ周到に全体の調整を行ってくださった。その結果、滞在期間中のすべての活動が円滑に進行し、教育・研究交流に集中できる環境が整えられていたことに、深く感謝申し上げる。
なお、Chauhan教授は、DV-Xα研究協会における国際的な活動において中心的役割を担っており、2025年9月にインドネシア・バリ島で開催されたDV-Xα国際会議(International Conference on DV-Xα Method; ICDM)においても基調講演を務めるなど、当該分野における国際的に重要な研究者の一人である。このような研究者が本訪問の受入を主導したことは、本交流の学術的意義の高さを示すものである。
4.講演実施と学生の反応
訪問初日から二日目にかけてのプログラムの中で、コンピュータサイエンス学部において、200名以上の学生を対象に90分の講演を行う機会を得た。講演内容は希少糖およびその結晶構造解析に関するものであり、専門的には化学寄りの内容であったが、学生は非常に熱心に聴講し、講演後には多数の質問が寄せられた。
さらに、講演終了後には多くの学生から記念撮影を求められ、これまでにない非常に印象的な経験となった。学生の学習意欲および知的好奇心の高さが強く感じられた。
5.教育・研究環境(産学連携の特徴)
学内見学を通じて、Galgotias大学の最も顕著な特徴として、極めて高度に体系化され、かつ実務と直結した産学連携体制が挙げられる。特にコンピュータサイエンス分野では、グローバル企業との連携に基づく教育・研究体制が整備されている。
同大学では、以下のような企業との共同ラボおよび教育プログラムが展開されている。
・Apple × Infosys iOS Development Lab
・IBM Collaboration Lab / Center of Excellence
・Microsoft Collaboration (Azure / AI / Developer Programs)
・TCS (Tata Consultancy Services) Collaboration
・Infosys Campus Connect Program
・HP × NVIDIA Deep Learning / AI Lab
・CISCO Cisco Centre of Excellence / Networking Academy
・Tech Mahindra Centre of Excellence
・Intel Technology / Innovation Lab
これらの連携は単なる寄附講座や形式的な共同研究にとどまらず、企業の開発環境や技術基盤を教育の中に直接組み込む形で運用されている点に特徴がある。
特に、Apple関連の教育環境では、学生が開発したアプリケーションが実際に市場に公開されており、教育と実社会が密接に結びついている。また、Swiftプログラミングコンテストにおいても多くの学生が優れた成果を挙げており、実践的なIT教育の成果が明確に現れている。
このような教育体制により、学生は在学中から将来のキャリアを具体的に意識し、「なぜ学ぶのか」という目的意識を持ちながら学修を進めている点が非常に印象的であった。
さらに、同大学ではキャンパス内に宿泊施設(ホテル)が整備されつつあり、加えて近隣地域において新たな空港整備も進められていることから、今後は海外からの研究者・学生の受入環境が一層強化される見込みである。このようなインフラ整備は、同大学が国際的な教育・研究交流の拠点として発展しつつあることを示している。
6.創設者および経営陣との面談
今回、特別に大学創設者であるSuneel Galgotia氏との面談の機会をいただいた。同氏は教育出版分野を基盤として事業を発展させ、その経験を活かして大学を設立し、インドの高等教育の発展に大きく貢献してきた人物である。教育に対する明確な理念と強い使命感が大学運営の中核に据えられており、それが現在の教育・研究体制の充実につながっていることを実感した。
さらに、CEOであるDr. Dhruv Galgotia氏、Director OperationsのAradhana Galgotia氏、Vice ChancellorのDr. K. Mallikharjuna Babu氏をはじめとする大学経営層との面談も行った。また、複数の学部長クラスの教員とも意見交換を実施し、大学全体としての教育・研究体制について幅広く理解を深めることができた。
7.共同研究の可能性
講演に加えて、研究ディスカッションも実施した。本学において進めている「希少糖の単結晶X線構造解析」と、Galgotias大学が強みとする機械学習技術との融合に関する議論を行った。
本テーマは、構造科学とデータサイエンスの融合を必要とする高度かつ挑戦的な研究課題であり、同大学との連携が有効であると考えられる。今後の共同研究の進展が強く期待される。
さらに、このような機械学習を活用した構造・電子状態解析の枠組みは、希少糖や超原子科学にとどまらず、本研究室で取り組んでいる広範な材料科学分野にも展開可能である。例えば、リチウムイオン電池や全固体電池に関わる材料設計、金属錯体や金属間化合物の電子状態解析、金属酸化物の機能評価、太陽熱発電材料の高機能化・高効率化、さらにはトポロジカル絶縁体に代表される先端電子材料の物性理解などにおいても、構造情報と電子状態を統合的に扱う解析手法および機械学習的アプローチは有効であると考えられる。
さらに、本訪問において得られた機械学習に関する知見は、本研究室で推進している超原子科学の研究にも密接に関連するものである。本研究室では、超原子同士の多重結合の形成機構を解明することを目的としており、DV-Xα法に基づく電子状態解析を中心に研究を進めているが、これまでに蓄積された膨大な計算および実験データを活用することにより、機械学習を用いた超原子軌道および超原子分子軌道の解析・予測へと展開することが可能であると考えられる。
このように、機械学習技術の導入は、従来の理論計算手法を補完・拡張する新たなアプローチとして位置付けられ、本研究室の研究の発展に資するものである。以上より、本訪問における機械学習分野の調査および研究交流は、超原子研究の深化に直接的につながるものであり、超原子研究との高い親和性を有する。
さらに、本研究テーマはインドにおける社会的課題とも潜在的に関連する重要性を有している。インドは世界有数の砂糖消費国であり、糖尿病患者数は既に1億人を超えるとされ、深刻な健康問題となっている。このような状況の中で、低カロリー性や血糖値上昇抑制作用などの機能を有する希少糖は、糖尿病の予防や健康維持への応用が期待される物質群である。
本研究で進めている希少糖の分子構造および電子構造の解明、さらに機械学習との融合による機能予測の高度化は、直接的な医療応用に直結するものではないものの、将来的には希少糖の機能性解明および応用展開を通じて、インドにおける健康課題の解決に資する可能性を有している。このように、本共同研究は基礎科学と社会課題を接続する意義を持つ点においても重要であると考えられる。
加えて、DV-Xα国際会議(ICDM)はこれまでアジア各国を中心に開催されてきたが、今後の開催地としてGalgotias大学を候補とすることも十分に検討可能である。同大学は教育・研究体制に加え、産学連携および国際交流基盤の整備が進んでおり、大規模な国際会議を受け入れる潜在力を有している。このような展開は、本分野の研究交流をさらに深化させる契機となることが期待される。
8.総括
2026年3月17日および18日の2日間にわたる今回の訪問を通じて、Galgotias大学が有する教育・研究レベルの高さ、特にIT分野における実践的教育と産学連携の先進性を強く実感した。
また、学生の学習意欲の高さおよび国際的視野の広さも非常に印象的であった。
さらに、両大学の教育研究体制を比較した結果、分野構成において高い親和性を有することが確認された。香川大学創造工学部は、造形・メディアデザインコース、建築・都市環境コース、防災・危機管理コース、情報コース、人工知能・通信ネットワークコース、機械システムコース、材料物質科学コースの7コースから構成されている。一方、Galgotias大学においては、School of Computer Science and Engineering、School of Artificial Intelligence、School of Computer Applications & Technology、School of Engineering、School of Basic Sciences、School of Media & Communication Studies、School of Designといった学部群が対応しており、デザイン、情報、AI、工学、基礎科学に至るまで幅広い分野で相互に補完的な関係が期待される。特に、情報・人工知能分野における同大学の強みと、材料科学や防災分野における本学の強みが相互に補完関係を形成し、新たな学際領域の創出が期待される。
今後、香川大学の教職員および学生が同大学を訪問し、現地の教育研究環境を直接体験することは、国際的な教育・研究の発展にとって極めて有益であると考えられる。そのような機会が得られることを期待する。
本訪問は、今後の国際共同研究および人材育成の新たな展開に向けた重要な契機となるものである。
加えて、本訪問を通じて、現在のインド経済の高い成長性と、それを支える人材育成基盤の重要性を改めて認識した。急速な経済成長を背景に、インドは今後ますます国際的な研究・産業の中心的存在となることが予想される。
このような状況を踏まえると、日本の高等教育機関にとって、インドの大学との共同研究の推進などの人的交流の強化は極めて重要である。特に、若い段階からインドの教育・研究環境に触れることは、国際的に活躍できる人材の育成に資するとともに、将来的な国際連携の基盤形成にもつながる。