研究室旅行2025年度

令和7年11月8日(瀬戸大橋記念公園)、昨年に引き続き、研究室旅行に行ってきました。


瀬戸大橋見学 〜材料科学の視点から学ぶ巨大構造物〜
 石井研究室の学生たちが、瀬戸大橋を訪れました。瀬戸大橋は、岡山県と香川県を結ぶ全長約13.1 kmの世界有数の長大橋であり、金属・コンクリート・複合材料・防食技術など、材料科学の粋が集まった構造物です。今回は、橋の雄大な景観を楽しむとともに、その背後にある「材料と構造の科学」に注目しました。

鋼材の強度と靱性:風にも波にも耐える構造材料
 瀬戸大橋の主構造には、高張力鋼(High-Tensile Steel)が用いられています。この鋼は引張強度が800 MPa以上にも達し、従来の構造用鋼よりも軽量で高強度です。橋のスパンが長いほど自重が設計上の制約になりますが、鋼材の高強度化によって部材断面を小さくでき、構造全体の軽量化が実現されています。
 また、強度だけでなく靱性(fracture toughness)も極めて重要です。瀬戸大橋は海上に位置するため、冬季には低温下での衝撃荷重も受けます。鋼材は低温脆性を防ぐため、適切な炭素量や微細な結晶粒組織をもつよう制御されています。こうしたミクロ組織制御によるマクロな安全性の確保こそ、材料科学の真髄です。

防食技術:海塩と湿気から鉄を守る
 瀬戸内海の海風は塩分を多く含み、鋼構造物の腐食を促進します。そのため、瀬戸大橋では重防食塗装が施されています。下塗りには亜鉛リッチペイントが用いられ、電気化学的犠牲防食作用により鉄の腐食を防ぎます。中塗り・上塗り層では紫外線や湿度に強いフッ素樹脂系塗料が使用されており、20年以上の耐久性を持つ優れたシステムとなっています。
 腐食モニタリングのためにセンサーを設置し、定期的に塗膜の劣化を評価するなど、材料劣化の科学的管理が継続的に行われています。

コンクリートと鉄筋の複合構造:応力分散の工学
 橋脚や道路床版には鉄筋コンクリートやプレストレストコンクリート(PC)が採用されています。コンクリートは圧縮に強く引張に弱いという性質をもちますが、鉄筋と組み合わせることで引張応力を負担させ、材料の相補性を活かした複合構造が実現されています。PC構造では鋼線をあらかじめ引っ張ってからコンクリートを打設し、残留圧縮応力を導入することで、亀裂の発生を抑制しています。

材料科学で見る未来のインフラ
 瀬戸大橋は完成から約35年を迎えますが、その維持管理においても最新の材料診断技術が活用されています。ドローンによる非接触観察、赤外線による塗膜下腐食検出、AIを用いたひび割れ画像解析など、材料科学・情報科学の融合が進んでいます。学生たちはこの見学を通じて、「材料は社会を支える基盤である」という実感を得ました。

学生の声
「巨大な橋も、結局は原子や分子の結合が積み重なってできていると思うと、材料科学のスケールの広さを感じました。」
「腐食防止のための塗装一つにも、化学と電気化学の知識が活きているのが面白かったです。」

まとめ
 瀬戸大橋は、単なる交通インフラではなく、材料科学・構造工学・環境科学の総合成果です。石井研の学生たちはその迫力を肌で感じながら、教科書で学んだ理論が実社会でどのように活用されているかを理解しました。今後は、この経験をもとに「持続可能な材料」「長寿命構造」の研究に活かしていく予定です。

植木算についても勉強をします。これは、八人九脚の例です。

石井研と言えば希少糖です。日頃から大変お世話になっている松谷化学さんです。


その他の写真です。
             
大変お疲れ様でした。三好さんは、安全運転、大変お疲れ様でした。